偶然から始まった小諸暮らし、“ちょうどよさ”が育む豊かさ

長野県の東信に位置し、千曲川と浅間山に抱かれた小諸市は、決して派手ではないけれど、住む人の心をじんわりと満たしてくれる。そんな小諸にはこの地に新たに移り住み、新たなライフスタイルをデザインしているセンパイ移住者が多くいます。あの人はどんな風にこもろ暮らしを創っているのか?小諸からはじまる豊かな暮らしの声を集めます。
今回お話を伺ったのは、東京から小諸に移住した井上さんご夫婦。偶然の出会いから始まった小諸での暮らしが、どのように“自分たちの居場所”へと育っていったのか ── インタビューで語っていただきました。
坂のまち、小諸との偶然の出会い
—— 最初から小諸を移住先に考えていたわけではなかったそうですね。
そうなんです。最初は軽井沢や御代田で土地を探していました。小諸に出会ったのは本当に偶然で、BESSの方から分譲地を紹介されたのがきっかけでした。最初に訪れたときは坂の多さに驚いて、「ここはないかもしれない」と思ったほどなんです。でも、造成が進んで家が建ち始めたころにもう一度訪れたら、不思議と「ここなら暮らせるかもしれない」と思えました。偶然が、少しずつ確信に変わっていったんですよね。

犬とともに整った暮らしのリズム
—— 移住後の暮らしのリズムは、どんなふうに変わりましたか? 最初は新しい土地に慣れることに精いっぱいで、余白を見つけるのが難しい時期もありました。でも犬が家族に加わってからは、生活のリズムが大きく整ったんです。朝の散歩、昼の仕事、夕方の散歩。季節の移ろいを感じながら歩く道が、自然と暮らしの背骨になっていきました。犬との時間が、この土地をもっと好きになるきっかけにもなりましたね。

“ちょうどよさ”という贅沢
—— 小諸で暮らす魅力を一言で表すと? やはり “ちょうどよさ”ですね。市内で暮らしに必要なものは揃うし、少し足を伸ばせば佐久や上田にも行ける。軽井沢のような賑やかさも手が届く距離にあります。自然は身近にあるけれど、生活は快適。都会のような混雑も騒がしさもない。偏りすぎず、心と体のバランスが保たれる町なんです。ここで暮らしていると、過不足のない豊かさを感じます。


薪ストーブの火を囲む時間
—— 憧れていた暮らしの実現もあったとか。
はい、ログハウスに薪ストーブを入れるのは長年の夢でした。冬の夜、火を焚いて揺れる炎を眺めながら過ごす時間は、本当に言葉にできない安心感があります。寒さの厳しい季節ですら楽しみに変わるんです。火を育てる手間も含めて、すべてが愛おしく感じられます。


「よそ者」から「まちの一員」へ
—— 地域の人との関わり方についても教えてください。
最初は「よそ者」という感覚をどこかに抱えていました。でも、地域の方々は本当に温かく迎え入れてくれて。「米米倶楽部」などの活動で一緒に汗を流して笑い合ううちに、その距離は自然と縮まっていきました。ふとした時に「私たち、もうこの町の人間なんだな」と思えるようになったんです。暮らしの中で静かに根を張っていく、その感覚がここにはありますね。

井上さんご夫妻の小諸での暮らしは、ほんの小さな偶然から始まったそうです。けれど犬や薪ストーブとの日常、地域の人たちとの交流を重ねるうちに、それは確かな居場所へと育っていきました。
坂の町で季節を感じながら歩き、火を囲み、仲間と笑い合う。そんな一つひとつの積み重ねが、“ちょうどよさ”に包まれた豊かさをつくっているのかもしれません。
そして、これから移住を考える人に伝えたいのは――「完璧な場所を探さなくても大丈夫」ということ。小さなきっかけや偶然が、気づけば自分にとっての必然になることがあります。大切なのは、その土地に身を置いてみて、自分らしい暮らしを育てていくこと。
新しい場所での一歩が、思いがけない豊かさへとつながっていくはずです。

取材・執筆・編集:武藤千春
撮影:蕨野真衣
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産業振興部 商工観光課
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長野県小諸市相生町3丁目3番3号
電話:0267-22-1700 ファックス:0267-24-3570

更新日:2025年11月14日